吉岡耕二  vol.1  “色彩の旅”

2023.4.2

吉岡耕二 vol.1 “色彩の旅”

*こちらは2020年9月に掲載した記事です

独特な色づかいで、“色彩の魔術師”とも呼ばれる国際的アーティスト、吉岡耕二。
パリ、ヴェネチア、エーゲ海、ニューヨーク等、大胆な構成と弾ける色彩で描く世界各地の風景。
1967年から始まり、今なお続いている、“色彩の旅”についてお伺いしました。

2021

「ニース Nice」
油彩/キャンバス  F20号(60cm×73cm)

 

アトリエ

閑静な住宅街にあるアトリエの扉を開くと、
そこは、鮮やかな色彩で溢れている。

色彩の旅

1967年、横浜から貨客船に乗り、一か月をかけてパリに渡った。
さらに、色彩の美しい景色を求めて、ヒッチハイクでスペイン、ポルトガル、それからモロッコに渡り、欧州中を何百台と乗り継いで旅をした。

「車や汽車の窓から見た景色は、四角いキャンバスに描かれた色彩の世界。
一言で言えば、僕は53年もの間、長い1枚のキャンパスのロールにずっと描き続けている。
色の世界をずっと追い続け、今につながっている。それが僕の“色彩の旅”」

 

色を求めて

アンリ・マチス、ピエール・ボナールなどの油絵は、当時は日本で見ることが難しい時代。
画集を買っても印刷の色質が悪く、実際に欧州に行って見なければわからないと思った。

「どうしてあのような色がつかえるのか不思議でならなかった。
本物を見たい、マチスのように、ボナールのように、“色を自由に使いたい”という思いが強くなり、迷うことなく横浜から船に乗った…といったら恰好良すぎるのかな(笑)それからずっと色を組み合わせ、描き続けている」

 

色は思うままに

「このパリの季節はいつですか?」と日本人には良く聞かれるけれど、季節は関係なく、“ブルーは春”、という決まりもない。

「色は自由に、好きなように使う。理由付ける必要は無い。考えず、そこに感じる色を使う。
決まりは無い。色を使いこなしたいと思うが、いまだに使いこなしてはいない。
いろいろな偶然性も含めて、組み合わせを楽しんでいる。それだけで充分ではないかと思っている」

 

半具象

仕上がりの表面の色の下に、色面としていろいろな色を置くことで、画面の密度を上げ、見る人に力強さを与える。

「飽きさせない画面を“描いている”ということを見て欲しい。
荒っぽいナイフのタッチ、筆、垂らし、透明感のある色、面の厚いマチエールのある色、極端な色の置き方、すべて含めて、抽象でも、写実でもない。
色による形の組み合わせでかろうじて具象に留めている。あえて言うとしたら、半具象だろうか」

 

求める絵画

渇きにとても時間のかかる油絵具。暖色系はなおさら。
色の濁りを避けるために、乾かし、そして、乾いたら色を重ねてまた乾かす、ということを繰り返す。

「色を何層にも重ねることで、重量感のある画面作りとスケール感、そして、色の美しさ、透明感を出していきたい。
10年20年と長く観てもらうものだから、飽きない絵を描き続けて行きたい」

 

 

 3つの質問

Q. 2017年に初発表された“モノクローム”のシリーズは、先生の代名詞である色鮮やかな作品と対照的な色づかいですが、制作に至った過程をお伺いさせてください。

A. 学生の頃、実習室でイーゼルを立てて対象物を描くような時、人が1枚描く間に、イーゼルを2~3台かけもちして2枚3枚描いていた。それくらいデッサンが得意で描くのが早かった。

油彩で描いていると、どうしても、デッサンをする木炭で目に馴染みのある黒色を使ってしまうので、あるとき黒を隠して黒に近い茶系、インディゴブルーなどを黒の替わりに使って絵を描いた。
そうして、暫く遠ざけていた黒を、もう一度使いたいと思った。
だから、色の世界からモノクロームの世界に突然変わったのではなく、もともと持っていたもの。
黒も色の一つとして、オイルパステルの黒で描いてみたのが“モノクローム”のシリーズ。

 

Q. 2019年フランスの取材旅行で初めてノートルダム寺院に登られたそうですが。

A. 高所恐怖症なので、以前、14年間パリに住んでいた頃は、高いところは避けていたのかな。
去年1月のお正月明けに登った。焼失したのは4月。まさか、と思った。

「ノートルダムの階段は、二人並んで歩けないほどの狭い階段を、はぁはぁ言いながら登って行く」という事を聞いていたので、それまで行ったことがなかった(笑)。

エッフェル塔、モンパルナスタワーなど、高い目線から見下すパリの街を描こうと思い実際にいくつか登ってみた、その中のひとつ。冬の寒いときに1時間くらい並んで。何か「行っておいた方が良いよ」と言われたのかも知れない。

今までの画業で初の「ノートルダムから望むパリ」という新しい構図の作品を描くことができた。

 

Q. 好きな作家を教えて下さい。


A. ニコラ・ド・スタール(Nicolas de Stael)
パリの近代美術館で、3.5m×6mの「Le Concert」という大作に出会い、その赤の美しさに衝撃を受けた。
後日、モンマルトルで偶然、ド・スタールの画集に出会った。とても高価で友人達からお金を借りてようやく手に入れることが出来た。今でもこの画集は大切にしている。

 

 

 吉岡耕二 作品 01〜10

5_展示の様子1
1_作品
2_額入り
3_分割左
4_分割右
6_展示の様子2
7_ななめ
8_アップ1
9_アップ2
10_アップ3
11_額アップ
13_アトリエにて
5_展示の様子1
1_作品
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6_展示の様子2
7_ななめ
8_アップ1
9_アップ2
10_アップ3
11_額アップ
13_アトリエにて

吉岡耕二 作品02
カンヌ Canne

技法     油彩/キャンバス
制作年    2019年
作品サイズ  F30号(72.7cm×91cm)
額寸     77.7cm×95.7cm×厚み5cm
備考     サイン有
価格     ¥2.500.000(税込価格¥2.750.000)※額代込みのお値段です

南仏は太陽のイメージ。地中海の美しい夕暮れ時、金色に輝く空が印象的な作品。

 

 

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