中西 和  vol.1  “夏”

2020.7.24

中西 和 vol.1 “夏”

移りゆく自然、めぐり来る季節に寄り添い作品を描く中西和。
第1回目は“夏”をテーマに、風渡る鎌倉の山の上のアトリエで、お話を伺いました。

 

「初夏」  洗い出し  20cm×32cm

美というものは、人と自然の間のいたる処に最初から潜んでいて、ただ目をやり、「気付き」さえすれば易々と見出せるもので、私達はそのことにあと少しのところで気付かずにいるだけなのかもしれない。

私にとって「美」とは、「創造」などという前に「発見」、いや「気付く」ものなのです。

中西 和

季節に寄り添いながら、描く

夏の涼


2008年以降、毎年描いて頂いている弊社の暑中見舞いはがき。
素麺、線香花火、水まんじゅう・・・
「身の周りのものしか描けない。それだけで充分楽しいし、美しい。
面白いことだらけです」

アトリエへの小径


「季節によって庭も草木も、自然はどんどん変わっていく。夏と思っていたら秋が始まっていて、というように。
それを追いかけているだけなのだけれど、意識的に追いかけようとも思っていない。季節に沿って描いているのが一番無理がないだろうと思っている」

究極の絵とは
「大きな刷毛でひと刷毛さーっと流したら、ぽうっとここに何か出現したかのような気分の絵を描きたい。こういう工夫があるんだぞ、というようなことでなく、さっと一刷毛したような。絵は、最小限の手間で最大限のことを伝えるということが究極だと思う」

中西絵画の技法的特徴

作品画面に近づくと瞬時にわかる、絵が呼吸しているような、水彩画や墨彩画とも違う不思議な肌感。

実は、白い絵具は使われていない。

描きたいものを描くために、独自の描法で
風に揺れる草を見ていて、学んでいた油絵の技法では表現できないと、いろいろ試して行き着いた技法「洗い出し」。
強靭さがあり繊維が細かな洋紙に墨や絵具で描き、ちょうどよい乾きを得たあと、水をじゃぶじゃぶとかけて、余分な絵具を洗い落とし、そしてまた描く、を繰り返します。
この過程で、紙の繊維に引き寄せられた絵具だけが重なって、絵具と紙は一体となり、その画面には心地よく、静謐で、穏やかな空間が生まれます。

「描いたものを洗うというと何か後戻りをしているかのように思われるかもしれませんが、作品の最終的な仕上がりをイメージづけ、決定づけたりするもので、描くことと同じく大切にしています」


※独自の描き方に、ご自身では特に名前をつけていらっしゃらなかったので、ギャラリー桜の木では個展を開催しはじめた25年前より、この描法を「洗い出し」と名づけて紹介しています。

中西和にとっての白
「私が白い絵具を使用しないのは、いったん彩色した上に、白や、白を混ぜた色を塗ると、何か重くにぶいものに感じられるからです。特に群がる草など描くとそれが著しいのです。草の軽み、光の煌めき、漂う空気、最も描きたいと願うものが描けずに困りました。やはり白い絵具は避け、紙の地色を活かした、新たな方法を考えるしかないと思うに至ったのです」


紙の地色を出すため、削り出すのに苦労していたとき、繊細な作業に向いた回転式の研削器具に出会い、「これだ!」と驚嘆したそうです。
ハンドグラインダーを筆がわりに描かれた素麺の線や、猫じゃらしの線、枯れ鬼灯の白線にご注目ください。

 

3つの質問

Q.「夏」で思い出すことなどお聞かせください。
A.故郷奈良の西の京辺りを歩いていると、関東と違って道が白い、明るいんです。子供の頃、親父に連れられて五条山の赤膚焼の窯元に行った帰りの道が、真っ白に光っているというのがずっと心に残っている。
だから僕は道を描くと真っ白でしょ。そういう影響があるかもしれない。

「大和佐紀路」 洗い出し 40cm×80cm

Q.これまで描いて来られた「身近なもの」についてお聞かせください。
A.いつも言うように、トマトはトマトにしか作れない、キャベツはキャベツが作っている。人間が関与して作物として作ってはいるけど、ものすごく身近にあってものすごく遠いものだと思うのです。
小さい花も、どれ一つ我々が新たに作ることは出来ないことだから。
“宇宙の歴史で全部万端整ったら人間が生まれてきてもいいよ”と言われたのか知らないけど、ものすごく良い所に生まれてきたような気がする。
花は無数にあって普通に咲いている。見たければ見れば良いし、無視すれば無視したって構わないし何も文句は言わない。だけど見れば見るほど、一つのものに言い尽くせない何かがいっぱい在るなあと思うし、それにはい、はい、と従ってるような感じ。殊更新たに付け加えるものがないので、同意だけしていくという感じです。
自分にとって「いい気分のもの」を描いて、人様と共有しようとは思いません。共有して下さる方がいらっしゃって有難いと思います。

Q.今後描きたいと思うものはございますか。
A.桃源郷というようなものを、日本の風景で描きたいという気はしています。
私は与謝蕪村が好きで、あの人はいつでも桃源郷にいるような人です。
「桃源の路次の細さよ冬籠り」という句が大好きですが、蕪村はずっと長屋住まいで、長屋でかくれんぼしているみたいな句もある。何があっても全部楽しんでいるみたいなところがある。ところが、蕪村の桃源郷の絵は中国的なのです。桃源郷は中国の話に出てくるからですが、それをなぞらえるというのではなくて、住んでいるだけで楽しいなぁというものを描きたいと思っています。

 

 中西和 作品 01〜07

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中西和作品01
素麺図

技法     洗い出し
制作年    2015年
作品サイズ  14cm×18cm
額寸     27.3cm×31.3cm×厚み4cm
価格     ¥150.000(税込価格¥165.000)※額代込みのお値段です

「清々しい気分のもの」の代表格のような作品。
「題材にこだわるというより、表現したい気分に合ったものを選んでいます」

 

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