田中 みぎわ  vol.2 “月と太陽”

2020.10.16

田中 みぎわ vol.2 “月と太陽”

雲、雨、海、川、大気。
自然の風景を水墨で描く田中みぎわ。
第2回は、「月」と「太陽」のシリーズについて、おうかがいしました。

 

作品「月の道」148×40cm

制作の元となるスケッチ

-出会い-
霧島連山の裾野に広がる、えびの市に、ゆったりと広く流れる川内川。
夜の水音に誘われ、宵闇に紛れて、ひとり水辺を彷徨い歩いて行く。
山あいから、その金色の輝きをのぞかせた十六夜の月は、
すでに右上がりに高きへのぼり、あたりを煌々と照らし出す。
その光は、霧がかった川面に、光が散りばめられたようなさざ波をたて
瞬く間に、一本の月の道を映し出す。

 

 

 

 

photo by Nakada Taiyo

-自然が先生、月の光の下での制作-
湖がすぐ近くに眺められる窓から、みなもに映る月を描く。
時には、頰に水しぶきのかかりそうなくらいに、水際に近い浜に車を寄せて、
紙を広げ、月の光の慈愛を頼りに、夕暮れを、夜を、夜明けを描く。

 

 

 

 

photo by Tanaka Migiwa

-月との呼応-
ある高台の海に面した宿屋にて。
東側と西側に大きな窓があり、一晩中、月を追って描いた。
大気に月の光がゆっくりと広がり、紙の上にも広がるのを感じる。
光の環が二重に奏でられると、紙の上にも呼応していく。
描くというより、「墨と水が自ら、滲みたいように、拡がりたいように…」を感じとり、そっと、手を添える、という感触。
まるで対話のような…。初めて*生紙(きがみ)に親しめた気がした。

このとき初めて月の音も聴いた。
月の唄といっても良いような、細い細い旋律の音。
耳ではなくて、触感的に聴く感じ。
そのとき、ああやっぱり月は唄うんだなと思った。
*「生紙(きがみ)」:滲み止めを施していない手漉きの紙。

「月夜野原」墨、胡粉/石州半紙稀 17.5×25cm

 

 

太陽

photo by Tanaka Migiwa

-生命の源-
夜をやさしく照らしていた月が沈み、入れ替わりに太陽が、新しき世界を照らし出す。
すべてのものは、太陽の光から生命の源を受け取っている。
この生命の光は、こもれび、やさしい雨、光る風、水の音…様々な現象の内に偏在している。
そして、自然は人の心に呼応する。
どのような心情にも、調和をたもち、そっとやさしく寄り添ってくれている。

photo by Tanaka Migiwa

 

 

 

Q & A

Q.「月」の作品に欠かせない紙との出会いについてお伺いさせてください。

A.絵を描いているときは、その喜ばしい瞬間を享受できるありがたさで、ほとんど何も考えずに制作をしています。
しかし、長年描かせていただくうちに、さまざまな方とのご縁を頂き、
「絵が自分の手を離れたあとにも、出来るだけ長くそのままの状態でご覧頂きたい」と考えるようになったことから、紙について学び、保存性に優れた紙を探し始めました。
まず、全国の紙漉き工房について勉強させていただき、その中から自分の希望の条件に合ったものを数件選び出しました。
その後、日本各地に点在する紙漉き工房へ直接お伺いし、説明を受け、紙漉きの行程を見せて頂く機会に恵まれました。
現在は、多くの工房が、昔ながらの紙漉きを継承されている職人の方々でありながらも、一般の人々に向けて工房をオープンにしており、理解を深めて欲しいという姿勢をとられています。
手間を惜しまず、欲もなく、ただただ、紙漉きを継承していきたいという実直な姿勢には、深く、感銘を受けました。
漉いたままの生紙(きがみ)は風合いが素朴でしなやか、かつ、強靭で保存性に優れています。
その紙は、太陽の光で黄ばむことはなく、逆に白さを増していくのです。
なかでも、島根県の海沿いで漉かれている石州和紙、富山県の山奥で作られている悠久紙の、その、墨の自由な、多少型破りとも思えるような滲み具合に、心を奪われました。
この風合いの美しさを活かし、滲み留めの加工を施すことなく、生のままの紙に描きたいと、自然の流れでそう思うようになりました。
自然を先生に、月明かりの下で絵を描くことにより、光の広がりと、紙の滲みとが呼応し、生紙(きがみ)を活かした表現が生まれました。

 

手前が滲み止めを施した紙、奥が生のままの紙    photo by Tanaka Migiwa

*「生紙」は生の紙の為、水を塗布すると下まで染み、「滲み止めを」塗布した紙は表面に幕が出来て水や墨が下まで染みていかない。

 

各地の楮紙のサンプルに墨で描き、滲みの広がりを試す

 

 

Q.現在構想中の、沖縄のシリーズについて教えて下さい。

A.「心のなかに天国がある
それは澄んだ鏡の海
どこまでも遠くとこしえに広がっていく
目を閉じればすぐに
感じることができる」

2019年、久しぶりに訪れた沖縄の空。
飛行機から見下ろした島々と海はまるで宝石のようで、梅雨明けの沖縄の空は限りなく透明に澄み渡っていた。
海をわたる風や、空を流れて光る雲は、いまこの瞬間が永遠だということを唄っている…。
扉の合間からとこしえをみたと思った。
このいまが永遠であること、それに気づくまたたきがあった。

この沖縄での啓示と、スケッチを元に描いた絵を中心に、次回の個展にてみなさまにご覧いただけたらと希望しております。

                               右:photo by Nakada Taiyo

 

 

 田中みぎわ 作品 01〜07

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田中みぎわ 作品01
月の道

技法     墨、胡粉/雲肌麻紙
制作年    2019年
作品サイズ  148cm×40cm
額寸     現状仮額
備考     ともシール有
価格     ¥740.000(税込価格¥814.000)※額代込みのお値段です

【額装について】
当社推奨額装にて制作致します。
額およびマットの色は、お選びいただけます。
推奨額装以外でご希望の場合、別途お見積にて制作致します。お気軽にご相談下さい。

 

「霧島連山の裾野に広がる、えびの市に、ゆったりと広く流れる川内川。
夜の水音に誘われ、宵闇に紛れて、ひとり水辺を彷徨い歩いて行く。
山あいから、その金色の輝きをのぞかせた十六夜の月は、すでに右上がりに高きへのぼり、あたりを煌々と照らし出す。
その光は、霧がかった川面に、光が散りばめられたようなさざ波をたて、瞬く間に、一本の月の道を映し出す」

滲み留めを施した雲肌麻紙を活かして、紙の表面に水たまりを作り、風が起こりさざ波が立つように、みなもを左右に揺らしながら描いた作品。

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