篠田 桃紅

2020.2.1

本年99歳 世界に誇る偉大な女性芸術家のいま

*こちらは 2012年2月のインタビューです

待ちわびた春の訪いを其処彼処に感じられるころとなりました。
三月、ギャラリー桜の木銀座では、三月生まれの篠田桃紅先生の個展を開催いたします。
「桃紅」という名は、号としてお父上が‘桃紅李白薔薇紫~’から取って三月生まれの先生につけられたもの。
先生は今年の三月で白寿を迎えられます。
日々硯に向かわれる篠田桃紅先生の、南青山のアトリエにて、個展のお話を伺いました。

抽象画は、観る人によっていろんな空間が無限に拡がるけれど、
字を書いたときは、ひとつの世界、ひとつの空間を楽しむという、また違う世界。
わたしのなかには、ふたつあるの。

5歳で墨に親しみ、14歳で墨の美しさに魅かれ、30代で既成の書のかたちにとらわれない、墨による抽象画を確立。
万国博覧会の日本パビリオンへの出品等で日本代表として活躍、戦後すぐに単身渡米、舞台は世界へ。1956年以降、アメリカ、ヨーロッパで数多くの個展を開催。瞬く間に高い評価を受け、現在まで世界で第一線を歩いてきた篠田桃紅先生。
大英博物館、MoMA、グッゲンハイム美術館などをはじめ、大変多くの海外著名美術館がこぞって篠田先生の作品を収蔵しています。昨年、そこにボストン美術館も加わりました。

[岩関] 個展のタイトルについて、先生のおことばを伺ってもよろしいでしょうか。

『艸上花下 石上樹下』

 「人間の持ちうる空間、良い空間ね。二つとも大好きな言葉です。
石上樹下、っていうのは、でも少し厳しい、人が経なければいけない修行のような空間。艸上花下は、のんびりとした、幸福な空間ね。どちらも素敵よね。
・・・抽象画というのは、人に全く自由な空想を働かせる、色と形と線というもので、人に訴えるのね。知覚の芸術としては、抽象のほうが純粋な芸術ね。人の心の働きを助けるちから、っていうのか、導くちから、っていうのか。
いっぽう文学を書くと、ある、ひとつの世界というのが限定されるわね。どちらが上、どちらが下もないけれど、どちらも私の中では大切な創作(こと)で、ふたつの世界があるの。観る人にとってもふたつあるんじゃないかしら?疲れたときなんかは空想の心で接しないで、絵から発せられるものに頼りたいときもあるわよね。」

『艸上花下』 金泥/プラチナ箔 40×160

『石上樹下』 墨、金泥/プラチナ箔 40×160

[岩関] 今年白寿を迎えられますね。おめでとうございます。

 「長生きしたものね。わたくしも本当に。でも年だけは平等に皆の上にやってくるというのか、老いた人と同じく、あなたも年をとるでしょう?毎年必ずどんな境遇にあったひとにも。人生ほとんどのことが平等ではないけれど、毎年ひとつ年をとるというのは同じね。み~んなが年を取るのよ(笑)。」

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篠田 桃紅 展 『艸上花下 石上樹下』
於 ギャラリー桜の木 銀座
2012年3月17日(土)- 3月31日(土)日祝休廊 午前11時~午後7時