水野 竜生

2021.10.13

大地と太陽の愛に抱かれる

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現場で迷っていては、感動を一瞬で閉じ込められない

A. 現場で描くとき、描き方に迷ったり、色を間違えたりはないです。感動を一瞬で閉じ込めたものを描くためには、現場で迷えないから。ぼくの絵は、写真みたいにそのまま表現するのが目的ではないですしね。風景の中で、リラックスできたとき、水平線から描くか、雲か、岬?というのが頭の中に降りてくる。ピンと来たらその瞬間にパッと入ります。

僕は、その場所が気持ちいい場所だったら、気持ちいい絵が描ける自信がありますよ(笑)。

水野竜生 Beautiful Sun rise 油彩SM/Beautiful 観覧車 油彩0号

Q. 絵の中に観覧車が見えます、取材された場所は何処ですか?

A. 海から昇る太陽を描きたくて。多くは東京湾に面した若洲という場所、ゲートブリッジのたもとのところですね。車で40分程度自宅から走って、自転車を積んでいって、車から降りたらキャンバスを背負って自転車で海ぎわまで行って描きました。こっちはディズニーランドの方向が見えて、この観覧車はそっちのものです。日は昇る、月はまだ残っている、ゲートブリッジの橋げたと橋げたの間に雪を被った真っ白な富士が見える。絶景を一人占めしました。あとは、本州最東端の犬吠﨑でも描きましたね。

Q. かなり厳しい取材でいらしたのではなかったか、と推測いたします…。

A. 寒かった時期はちょっと辛かったので修行のようではありましたね(笑)3時半位に家を出るんです。本郷通りがいつもと全く違って見えて、ナトリウム灯のあかりの雰囲気も、歩いている人も違うし、頭もちょっと時差ぼけみたいで。描いている場所はいつもの東京ではありながら、時間が変ることで外国に居るような、とても新しいものに出会わせてもらいました。新鮮な気持ちで絵が描けたと思います。昇る太陽を眼前にして、とっても厳かな気持ちになりました。毎回大気の状態が違うから、色も違う。靄が出ているときはドラマチックに出てくるんです。「時間よ止まれ~!」って叫びたくなる位。でも、僕それを描きましたから。いつだって見られますよ。

水野竜生先生 制作風景

Q. はい!寝室におすすめしたいな、と思いました。目覚めて最初に眺める絵としたら素敵だな、と。あと先生、今回、サインの形が特別な気がします。

A.よくぞ!きづいて下さいましたね。今回は意味があります。この日の出の取材は90回以上しましたが、日が昇る一瞬、それは一日として同じ日は無かったし、毎回感動する。今日という日まで、この気の遠くなるほど繰り返されてきた天体ショーに、僕とそして地球、太陽が参加している、そのイメージを体感した気がします。「と、いうことは、」と思ったんです。太陽は、本当は動いていない。登る太陽を今見ている僕は、いま地球という斜めに軸を持った自転する玉の上に立っていて、太陽の方に向かって動いている、という図を考えたら、「ああ、この描いた絵を横にすると、そこに宇宙からみる視点が楽しめる」と思いました。重力ありきの感覚でぼくたちはいますから、身慣れるまではちょっと頭を転換しなくちゃいけなくて、最初は奇妙に見えるかも。でも自転車にのれるようになったときみたいな発見が、将来あると思うんです。宇宙からの視点、横に90度倒して飾ることができるように、サインは縦横のない円形にしました。

Q. なるほど、神様が地球と太陽を見ているみたいですね。やはり水野作品は観る人の時間と共に熟成する、というまことしやかな噂(?)は、今回も本当かもしれません。将来また更に美味しくなる絵。最初奇妙に思った方も、あとあと段々好きになる、という方もいらっしゃいますし。先生、どうもありがとうございました。

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水野竜生展 vol.8 『BEAUTIFUL SUNRISE~太陽がいっぱい~』
於 ギャラリー桜の木 銀座本店
2012年10月6日(土)―10月20日(土) 日祝休廊 午前11時~午後7時