2019.2.22
平安の昔 御姫様たちが遊ばれた 有職の美を現代に
-このインタビューは2012年6月7日に掲載した記事です。-
「私は芸術家ではなく、職人です」と仰る林美木子先生はいま40代。20代後半から、和歌や仮名文字と時を同じくして都に生まれた「大和絵」を、忠実に再現する仕事を重ねてこられました。
有職の美を現代に息づかせる名匠です。
6月、当ギャラリーで初の個展を開催させていただく、京都の林美木子先生のアトリエを訪ねました。
[岩関] (アトリエで制作中の人形を拝見して) うわぁ、凄い!小さい!可愛い!
帽子も獅子頭も、人形ができてから作ってるんですよ。この仕事をはじめる前、博物館で洛中洛外図を見たときにガラスケースの中から、「わー!」って声が聴こえてくるような体験をしたんです。時を超えて、こんなに饒舌に話しかけてくるものがあるなんて。よし、自分もそういう仕事をしよう、と。今はやる人のいないこの仕事を始めたんです。
唐子舞の人形は昨秋の雑誌「ふでばこ」取材時にちょうど初めて創ったばかりだったんです。あの15人は、もう二度と作れないと思ったから手放せなかったんですけど、今度は発表するために準備しているところです。
〔岩関〕 このお人形たちの、本格的な発表の場が桜の木で、というのは幸せです。さらに、1月に刊行された東京国立博物館の猪熊兼樹先生と共著の、はじめての本格的な有職美術の教科書『王朝のかたち』のために作られた作品のお披露目の機会を戴き、心より感謝申し上げます。
本当に「御縁」というより他にないですね。私の仕事は、表具屋さん、屏風屋さん箱屋さんに頼む以外はすべてひとりでやっているので、どうしても「発表する」ためにつくるよりも注文が主体の仕事になってしまいます。でも、この本のおかげで、新しく挑戦した作品があるので、だからそれを見ていただきたいですね。個展では皆様のご感想が聞けるのをとても楽しみにしています。
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