岩田 壮平

2022.10.20

花にひそむ、天然の情緒を生け捕る画人

*こちらは 2012年1月のインタビューです

日本画、主題は花。幼少のころから花に親しみ、花と共にある仕事として画家の道を選んだ岩田壮平先生は、いま画壇をにぎわし、鮮やかに活躍する33歳。ギャラリー桜の木での個展の機会を待ったこの三年は、季節毎に重賞受賞のニュースを頂いた気がいたします。 お持ちの花暦に沿って、お目当ての花が咲く頃、月に二回は三鷹・深大寺に隣接する神代植物公園を訪ね、デッサンされるという岩田壮平先生。神代植物公園をご案内いただきながら、2月開催予定の個展のお話を伺いました。

花屋さんの花と土から咲く花とでは、やっぱり全然ちがいます。
こうして咲く花を訪ね歩くのは、創作の源、私にとって必要な日々の営みです

都立神代植物公園は、およそ5000種・10万本の植物が植えられている、都立唯一の植物公園です。武蔵野の良い空気が漂います。

岩田壮平先生は、名古屋に生まれ育ち、18歳から金沢美大の日本画科で学び、24歳・大学院卒業と同時にアトリエを東京に移されました。土屋禮一先生に師事、千住博先生の薫陶を経て現在33歳、日展において特選を二回受賞、無鑑査の最年少メンバーとなられました。先生は東京に移った八年前から、この公園には足しげく通われるようになったそうです。

左:神代植物公園入口 右:バラ園で

左:神代植物公園入口 右:バラ園で

「花の咲く頃が書いてあるカレンダーってありますよね。あれを見ながら、あ、そろそろあの花が咲くころだな、とか思いながらアトリエを出るんです。通算月二回以上は来ているような気がしますね。」
取材当日は休日で、どこもかしこも人だらけでしたが「平日は全然誰もいなくて、花に没頭できて良いんです」とのこと。デッサン帖を片手に、夢中になって描くと、気がつくととっぷり日が落ちていることが多いそう。「花屋さんの花と、土から咲く花とでは、…やっぱり全然ちがいます。こうして咲く花を訪ね歩くのは、創作の源、私にとって必要な日々の営みです。」

左:広い園内 右:ダリア園でかまきり発見!

左:広い園内 右:ダリア園でかまきり発見!

「花は、幼い頃から親しんできて、身体になじむというのか、自分に合うというのか、一番心動かされる、と思う主題です。描くとき、自分の感情に迷いが有る時はだめですね、花に逆らわないことですよね、あるがままに。でも、見えたままを描いても、〝ありのまま0にはならないですよね。その花のすがたを保っている何か、力というのか、そこをつかまえなきゃ、と思いますよね。眼だけじゃなくて全身で、感情も、それを描く手も必要。こっちが真剣にならないと見えないものがあると思います」
園内のお気に入りは、薔薇園、ダリア園、牡丹園。一点の作品ができるまで、デッサンを数回重ね、構図を決めてから本画におこし、最後に花そのものを傍らに置き描く。思う色が出るまで、花弁一枚一枚に豊富な水分を含ませ、ひたすらに乾くのを待ちながら描く。おのずと年間描ける数が少なくなってしまい、作品の確保合戦が起きてしまう現状に。「どうしても沢山は描けなくて。申し訳ないと本当に思っているんです。」

『陀梨亞』紙本岩彩 2011年

『陀梨亞』紙本岩彩 2011年

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岩田壮平出品『UNDER 50』
於 ギャラリー桜の木 銀座
2022年3月5日(土)〜3月20日(日) 火祝休廊 午前11時〜午後7時