龍のよう——上海人・北京人

2004年に上海にアトリエを構え、大発展してゆく上海の街を描き始めた。キャンバスを街の中に持ち出し描き始めると、あっという間に人だかりが出来る。僕の絵はその頃は半抽象なスタイル。あらかじめキャンバスにその風景とは関係なく下地の色を塗っておき、現場に行った時はその色と目の前の風景がコラボする様な感じで描いていく。目の前の風景を描くというより、木や建物などの形や色を借りて一枚の絵を完成させていくという方が近い。大事にしているのは現場で描くことで、目だけでなく五感が刺激されて情報量が多いので、シンプルな線であっても現場感が伝わる絵ができる。そういう絵なので、見ている人に何が描いてあるのか分からず笑われることもあった。 しかし、画廊に絵を掛けておくとポツポツ売れていった。初めのうちは人を描かずにいたが、あまりにも人が多いせいか、いつの間にか画面の中に人の形が現れるようになった。この街を発展させているその人々の熱いエネルギーを感じそれを絵にしたいと思った。僕のスケッチブックは印刷されていない名刺。小さいので相手に気づかれる事なくさっと描ける。1日に500枚くらい描いた時もあった。そうして貯めたスケッチから描いたのが上海人や北京人だ。中国では画材が安い。キャンバスなど大きくなればなるほど日本との差が出る。そんなわけで2x2mや20mの絵も描くことができた。2007年上海美術館では「衆」というタイトルで、風景から始まり人の絵までを展示させて頂いた。2008年、北京の中国美術館で陳輝先生と二人展「芸術家の対話」を開いていただき、全て1m以上、ほぼ大作からなる111点の『北京人』を発表した。どちらの会場でも、観客が皆笑っていたのがうれしかった。