龍のよう——故郷新潟、パリ、上海。日本画、水墨画、そして油絵。

初めて上海と北京を訪れたのは1987年。折しも日本海を取り囲む諸地域が文化や経済で連携・交流する「環日本海」時代、親が主宰するバレエ教室の国際交流公演のための下見である。母に随行する当時の僕は、三浪して入った東京藝大日本画科の3年生。日本画を学んだが、もっと奥を探りたくて雪舟はじめ見事な水墨画に憧れ、孤軍奮闘していた。水墨画といえば、紙と墨があればできそうなもの、しかしなかなか作品にはなってくれなかった。

卒業後、フランスに3ヶ月行くチャンスを得た。アカデミー・グラン・ショミエールという毎日ヌードを描かせてくれる学校に通い、そこで油絵具に出会った。面白いように絵が描けた。パリを拠点に活動することにした(~1997年)。そこに上海でお世話になったかたから水墨画を学びに留学しませんかとのお誘いを受け、パリから上海に定期的に通った。書道と同じく水墨画には筆法があることを知り、中国画の模写をして各々時代によって筆の運びが違うことを学んだ。ようやく、長く悩んだものから解放された。いま、油絵具もアクリル絵の具も岩絵の具(日本画)も水墨画も、筆が動く。故郷新潟、パリ、上海。すべての土地が血肉になった。僕は、表現したいことによって自由に画材を使う。