田中 みぎわ

2020.6.15

自分の中の確固たるイメージと、墨が織りなす偶然性とを対話させていくことが、水墨を描く面白さだと感じています

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この圧倒的な紅をどうやって表現したら良いのだろう、紅の色では表現しきれない、と身体で感じました。もともと私は木炭でスケッチをしていたのですが-というのも、雲はどんどん変わっていくので、姿を追っていくのに素早く描ける木炭が適していたからですが-、その時、その自分の描いた色のない木炭のスケッチを見て、モノトーンからは、視覚で捉えた風景だけではなく、心で、五感で感じた風景を感じ取ることが出来るように思いました。

 

それで、当時、色絵の具の下絵にしていた墨だけで、モノトーンで描いてみることにしました。そうすると、墨の滲んだり流れたりといった偶然性が、水や風などを描くのに合っているのではないかとも思うようになりました。墨はその偶然性が自然界の表現を現し、面白いところなのだけれども、偶然性に頼り切ってはだめで、日々のスケッチを重ねていくことで得られる自分の中の確固たるイメージと、墨が織りなす偶然性とを対話させていくことが、水墨を描く面白さだと感じています。

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