水野 竜生

2021.10.13

大地と太陽の愛に抱かれる

*こちらは2012年のインタビューです 

東京藝術大学で日本画、パリで油彩を、上海で水墨画を学び、現在フリースタイルで描くライブ感あふれる筆致&超絶な色彩感覚が、広く国内外の絵画ファンを虜にする水野竜生先生。
 “描くのは何故か、それは「絵画は一瞬で人を幸せにできるから」”
 東山魁夷、加山又造に次いでの国立上海美術館の個展や、北京の国立中国美術館での二人展などなど、アジアでの際立つ活躍に加え、フランス、西海岸、オーストラリアまでファンは拡がっていて、どうもこの絵画を見て楽しくなってしまうのは日本人だけでは無い、ということは明らかなようです。

 只今、ギャラリー桜の木銀座で第八回目となる個展「Beautiful Sunrise太陽がいっぱい」が開催中です。印象派の画家たちと同じく、外光の下、風景の中にキャンバスを持ちだして描く水野先生が、2012年主題としたのは“Beautiful”。その自らに課した最初の課題は、人が自然の前に「美しい」と言葉もなく立ちすくむような体験を、絵画の中に閉じ込められないか、ということだったとのこと。そして、日の出の瞬間を描くことに決めた水野先生は2012年2月末から7月末まで90回以上、朝3時半出発しての取材を敢行。残念ながら取材場所に着いても天気が悪く日の出が見えないことも多かったそうです。
 いま、画廊には日の光を浴びて描かれた作品が40余点、展覧されています。水野竜生先生に、作品が展覧される中で制作のひみつを教えて頂きました。

明ける空 朝靄の空気にけぶる太陽 光が地平線を照らし始めるとき
生命は天体と天体の大きな愛に抱かれる

Q. 先生のこの色彩は、どこからやってくるのでしょう?

A. もしも、影響されたとしたら、バレエの衣装かなぁ、と思います。幼い頃からバレエの世界は身近でしたから、かなり観るのですが、美しいな、と思うとその色がインプットされていく。お寺の中にある色も、僕の中にあります。土壁の色、荘厳な建築の中にある色。和の世界にある色。あとは、ラジコン飛行機とかのミリタリーデザインにあらわれる色の取り合わせをじっと見てたりすると、生まれてきますね。

水野竜生先生 制作風景

Q. 先生は、“外光派”、現場で描かれますよね。まずは1色目を手にされるとき、どこから、もしくはどんなふうに始められるのですか?

A. あぁ、では制作の手順を説明しますね。僕はまず、使う色の取り合わせを前日の夜のうちに頭の中で編みあげておくんです。そして取材場所に行き、いくつかのその頭の中の色の取り合わせに出てきた、スターティングメンバーたる絵具をまずパレットに並べます。それが始まり。で、風景の中にまずは自分が同化するまで、頭をからっぽにします。「その場所が気持ちの良い場所」であることと、「そこで自分が風景になること」がとても大事なんです。居眠りも大事。ウクレレを弾いたり。で、日の出を待って、描く瞬間が来るのを待つだけ。描き始めたら、最後まで一気通貫です、パタパタパタ、と構築され絵が仕上がっていく。

Q.そうですよね、現場であれこれできない…。迷っていられないですよね。

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水野竜生展 vol.8 『BEAUTIFUL SUNRISE~太陽がいっぱい~』
於 ギャラリー桜の木 銀座本店
2012年10月6日(土)―10月20日(土) 日祝休廊 午前11時~午後7時