宮村 秀明

2013.10.4

アメリカ、ボストンを拠点に活躍する日本人陶芸家  日本における第二回目の個展に寄せて

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アメリカでつくられるもの、日本でつくられるもの、風土が産むものはやっぱり違う。
アメリカという土地のなかにあって、そこに日本人である僕のバックグラウンドが
何かしら響いて、作品が出来上がるんだと思う。

〔岩関〕 日本で三浦硃鈴先生の下で学ばれながら研究された成果をもってしても、アメリカに拠点を移された時、すべてが一からの挑戦でいらしたのではないでしょうか。

〔宮村〕 そうです。日本で1万回実験した成果をもとに、同じ調合でアメリカでやっても、全然思った通りに出てこなかったですね。土の問題もあったし。釉薬の中で結構重要なのは長石だと思うんです、日本で慣れていたものは手に入らない。でもアメリカ大陸は広いから、手に入る長石が4から5種類、あったんですよ。その中でも、日本に近いものを研究して、やってみて、でもそれでもうまくいかないので、すべて捨ててゼロからはじめました。アメリカに行ってから、僕のやりたいことには、温度が、日本でやってた温度では低すぎると気づいて。日本では1220度くらいが限界だったけれど、こちらの窯の性能を利用して1320度くらいまで持って行くようにしたんです。そんな高温に耐えて、崩れてしまわない、アメリカの土を考えて。

〔岩関〕 高温に負けない土なのですね。それでも、窯から出てくると大きさや形はどれくらい変わりますか?

〔宮村〕 20パーセントくらい締まりますね。結構違います。

 

無題3

〔岩関〕 宮村秀明先生の編み出された鮮やかな虹彩のなかには、いくつか名前がついたものがありますね。いくつか、ご紹介いただいてもよろしいですか?

〔宮村〕 そうですね、「Starry Night」は、10年位前から安定して出せるようになったものです。名前の由来はゴッホの絵画で、「星降る夜に」、という作品がありますね、あの夜空のように、光の当て方でぐるぐるとする結晶釉。これは4年前の日本での最初の個展のときに、皆様にはとても喜んでいただけて。でも今回ほぼ出品できていないのは、なぜか最近出てくれなくなってしまって。

「Hare’s Fur Glaze」これは、日本でも兎毛釉といわれる釉薬がありますが、僕のは野兎、ワイルドな感じ?の名前ですね。今回このシリーズの釉薬に、白の釉薬を頭にかぶせた、「Snow cap」のシリーズが多いですね。あと、「Sea Form」、これは、4年前にね?岩関さん。

〔岩関〕 はい、個展前にアトリエに伺った時に、特別にお願いしてご出品をお願いしたものです(笑)。

〔宮村〕 あのとき、5年間で3つかな、4つかな、もう本当に出ない釉薬だったんです。で、アトリエに大事にしていたのを見つかってしまって出品したじゃないですか。手許から離れてから、そのあと、一からやり直して研究して、ずっと日本で見てもらおうと思ってこの4年、どこにも出さず。出品数は結構できましたけど、でもまだまだ難しい釉薬。今回皆さんにご覧いただけるのが嬉しいですね。

〔岩関〕 ほんとうに光栄なことです。皆様の反応が楽しみです。

〔岩関〕 最後に、作品をおつくりになるとき、どんなイメージをこめておつくりになるのでしょうか?一番影響されたもの先生を刺激するものは?そして、アートでいうと過去ご自分にとって一番印象深いのは?などお聞きしてよろしいですか?

〔宮村〕 僕にとって、この道を歩んだきっかけは窯変天目茶碗との出会いでした。今、創作において僕に一番影響を与えたアートとの邂逅は、イタリアのガラスアーティストの仕事をスミソニアン博物館のレンウィックギャラリーで見てからですね。LINO TAGLIAPIETRAって人のですけど、この人の作品に出合って、吹きガラスの形を、重力に逆らってつくってみたいという衝動にかられました。

〔岩関〕 とても素敵なお話しですね。スミソニアン博物館には宮村先生の作品も収蔵されていますよね。本日はありがとうございました。

 

 

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宮村秀明展
於 ギャラリー桜の木 銀座
2013年10月5日(土)-10月20日(日) 
火祝休廊 午前11時~午後7時