宮村 秀明

2013.10.4

アメリカ、ボストンを拠点に活躍する日本人陶芸家  日本における第二回目の個展に寄せて

“芸術の秋”、とは、不思議と耳慣れた言葉でございますが、ほんとうに目に藝術が美しく響く季節となりました。
10月のギャラリー桜の木では、アメリカで活躍する宮村秀明先生をお迎えして、日本で4年ぶり第二回目となる個展を開催いたします。個展開催にあたっての御言葉を来日中の先生に伺いました。

好きだから。ね。成功率が低くてもしょうがないんです。
どれがうまくいくかは、僕はコントロールできない。悟りの境地というか(笑)、好きなものが出てくるまで、どんなに割れても失敗しても、しょうがないですよね。そりゃあつらいですけど、いちいちそこを気にしていたら前に進めないし(笑)

 

宮村秀明先生のアトリエは、ボストンから車で1時間、ニューハンプシャー州の樫の木と杉の木の混在する美しい森の中にひっそりとたたずむ一軒家。敷地内をさらに車を走らせ、先生の建てられたおうちと窯を除いては一切人工物の見えない森の奥にあります。

ご自分のアトリエを言葉にすると、「僕にとって、世界で一番安心できる、コクーンのような場所」。ボストンから車で2時間だった町から10年前現在の場所に移り、アトリエを建てられたあと、分野の違う二人の仲間が集まってこられて、ご一緒に共同生活を営まれているそうです。

無題

 

〔岩関〕 2009年にアトリエに伺わせていただいて、作品を手にするだけではわからなかった部分まで、いくつか学ばせていただきました。まず、1320度という高温に耐える白い土(砂といいますか)が轆轤で仕上げられたところの姿をみて、吹きガラスのように、ふうーっと空気が吹き込まれたような形状が、「重力に逆らってつくる」ものである陶芸で作られている!という実感が湧きましたし、また、それらに釉薬が今まさにかけられているところを拝見して、釉薬の分厚さに驚きました。そして、なにより、失敗をものともしない先生のさわやかな笑顔ですね。13000回の釉薬研究、とは、釉薬の調合、温度の調節があいまった、とんでもない数の研究ですよね、4年前に13000回でしたから、今はもっとすごい回数になっているのではないですか?

〔宮村〕 そうですね。もう5年位前から数えるのをやめてしまいました(笑)。前回の日本の個展から考えると、結構回数、いっちゃっていますね。うーん、どれくらいかなぁ。

〔岩関〕 釉薬の研究以外にも、形状でも先生は挑戦的ですよね。チャーミングで超絶、口がきゅっと細くて、一輪の花もはいらないかな?というVASE。この、宮村先生ならではの造形美は、創作される際にはとくに失敗率が高いそうですね。

〔宮村〕 そうなんです。この細い口だと、内側に釉薬がかからないから、内側は白い素地の状態でしょ、だから窯の中で外側は金属でコーティングされているけれど、圧力が外と中と違うし、空気の出口が細いから、窯の中で割れちゃう。たまに窯に入れたあとすぐに、ピンピン!ピンピン!って割れる音がするんですよね(笑)うわー、中で、割れてる割れてる、って(笑)。

無題2

〔岩関〕 どうして先生は、せっかく作った作品が窯のなかで破裂する話を、にっこり笑ってさわやかにおっしゃることができるのだろう、って不思議に思います。

〔宮村〕  好きだから、としかいいようがないですね。悟りの境地というか(笑)、好きなものが出てくるまで、どんなに割れても失敗しても、しょうがないですよね。そりゃあつらいですけど、いちいちそこを気にしていたら前に進めないし(笑)

〔岩関〕 そこに感動する心には国境がないのですね。ボストンの個展でも、「Risk of Discovery」というタイトルの展覧会も開催されていますね。釉薬研究、創作へのこだわり。リスクをものともしない情熱、と先生のさわやかな笑顔には、多くのことを学ばせていただいた気がいたします。

〔宮村〕 今度アメリカで出版準備中の僕の本も、そのタイトルRisk of Discoveryなんです。今回出品の作品も一部掲載される予定ですよ。

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宮村秀明展
於 ギャラリー桜の木 銀座
2013年10月5日(土)-10月20日(日) 
火祝休廊 午前11時~午後7時